パワハラ予防コラム

~働きやすい組織を目指して~

パワハラ予防コラム vol.8~業務分担スキルの2面性

「残業時間の上限は、原則として月45時間・年間360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。」と、厚生労働省の働き方改革特設サイトに、時間外労働の上限規制について掲載されていました。
※施行は大企業で2019年9月から、中小企業では2020年4月からとなっています。
 
働き方が見直され、効率よく時間を使い生産性を上げるために、いかに業務を分担していくかということが問われています。そこで今日は業務分担スキルについて考えていこうと思います。
 
時間外労働が80時間を超えると、心疾患や精神疾患による過労死の危険性が高くなると言われていますので、これまで会社から強要されていた残業問題は緩和されることが期待できそうすが、自らの意思で残業をおこなっている人もいます。
いわゆる、「仕事を抱え込む」人です。
この業務分担スキルが高いと、自分や部下の能力に応じた仕事を的確に割振りすることができるのですが、低いと仕事を抱え込んでしまうという事が起きます。
仕事を抱え込む理由の一つとして、ミスができない大事な仕事だから人に任せられない、というものがあります。
これをもう少し掘り下げてみると、この重要な仕事をやっている自分は会社にとって「居ないと困る存在」だ、と思いたい。自分は会社にとって「必要な存在」だ、という自己満足感を得たいのです。
そもそも、人は社会的承認欲求がありますから、逆に言うと自分は必要な存在なのだろうか?という不安を抱えています。
その不安が大きければ大きいほど不安をかき消すように仕事をして、他の人に仕事を振ろうにも振れずに仕事を休めなくなってしまうという悪循環に陥ってしまうのです。
 
この場合、仕事に自分の存在を投影しているわけですから、抱えた仕事を手放すのはとても勇気がいります。ではどうすればいいか。
それは目の前の仕事に捕らわれず、少し先をイメージしたり、次のステージを目指してみるのがいいでしょう。
例えば部下との信頼関係を築き、仕事を教える、任せるという「人を育てる」ステージに上がることで、仕事を抱え込むことなく自己満足感を得るのです。
人を育てるためには、様々なことを部下にやってもらわなければいけないので、業務分担スキルが向上していきます。
 
ただし、業務分担スキルが高いのは、良いことばかりではありません。
勿論、それが長所として現れれば、人材を適材適所に配置したり、能力に応じてチャレンジしやすい業務を割り振ることができますので、会社にとっても重要な存在になるでしょう。
しかし、これが短所として表出するとどうなるでしょうか。
「これは私のやる仕事ではない」「これくらい誰でもできる仕事」などと、自分本位に仕事を任せてしまうにもかかわらず、部下に対して「よくやった」等と褒めることもしない。
こんな風に、次々に無茶ぶりを繰り返してしまうと、部下からパワハラだと訴えられる可能性も考えられます。
この業務分担スキルの高さがリスクとなってしまうのを食い止めるにはどうすればいいのでしょうか。
このタイプの人たちは能力が高く、難しく思える仕事には俄然やる気を燃やすのですが、誰にでもできる簡単な仕事には興味がない、という特徴があります。
つまり、その仕事の必要性や重要性が見えていないのですから、「あなたが」それをやる意味、目的や目標を考えてもらうと良いでしょう。
弊社では社員のコミュニケーションスタイルやリーダーのマネジメントスキルをあぶり出す適性検査を導入した研修で北陸(石川・富山・福井)を中心に働きやすい組織づくりを支援しています。
管理職やリーダーへのパワハラ防止研修を通して働きやすい組織づくり、ダイバーシティの推進、若手の定着など、ご相談ください。
株式会社シェヘラザード 邑本なおみ

パワハラ予防コラム vol.7~誰のための共感か

4月に入社した新入社員もそろそろ会社の雰囲気に慣れてきた頃かと思います。それと共に、退職や転職の相談に来られる方が増えてきました。 

 

ここ最近、私がお受けした相談で多かった退職理由は 

 

1.思った感じと違った 

2.ちゃんと教えてくれない 

3.周りから監視されているようで気が抜けない 

 

1は、業界研究が足りなかったとご自身でも気づいています。 

2・3に関してはどうも他人軸傾向が強いように感じます。 

 

これまで教える専門の人(先生)から、学ぶために用意された環境(学校)で10年以上ずっと教えられ続けてきたこともあり、会社でも1から10まで教えてもらえると思っていたところ、入社してみると先輩社員は皆忙しそうで誰に聞いていいのか分からず、結局誰にも聞けないというのです。 

 

仕事をしていても、これでいいのか、間違っていないかと常に不安を抱えているのに、その不安を打ち明ける人がいない。ビクビクと迷いながら仕事をするせいで何度もやり直しをして時間がかかり、「自分は仕事が遅い。この仕事は向いていない」と辞める理由をかき集めます。  

 

一方で、指導係りが付いていてもうまくコミュニケーションが取れず、聞きたいことがきけない場合もあります。指導係りの言い方がキツイと感じたり、馬鹿にした態度にに思えたり、聞こえるように悪口を言うなど、後輩社員に対して侮辱・暴言を吐く行為は、精神的な攻撃としてパワハラに当たると考えられます。 

 

今日はそんな危険を回避するためのキーワード「共感」について考えていきましょう。 

 

共感とは感情を理解して共有する能力(オックスフォード英和大辞典) 

他人の意見や感情などにその通りだと感じること、また、その気落ち(goo辞書)とあります。 

 

共感力が低いのは一見悪い印象があるかもしれませんが、任務遂行能力が高いという一面があります。例えば、嫌がる部下に残業を依頼するなど、周りの感情に引きずられることなくやるべきこと見失わず、業務を実行できる長所と言えるでしょう。  

 

逆に共感力が高い場合、「共感を示してあげなくては」と部下の話を親身に聴き、「うんうん、そうか、分かるよ」と同調をしていくことで、相手はどんどん気持ちよくなって忘れていた過去の思いまでも再燃させてしまう事があります。  

 

共感するのは一見いい事のように思えるかもしれませんが、共感には相手を救う共感と、相手をダメにする共感があるのです。相手を救う共感とは、本当に辛いときや頑張ったときにその感情をしっかりと受け止め、受け取ったことを言葉や態度で示します。逆に相手をダメにする共感とは「共感しちゃう」ことを指します。 

 

そもそも、その共感とは誰の為にするものでしょう。

 

可愛そう、頑張ったね、大変だったね、と自分事のように一緒に涙を流す人。これは相手の話を聞きながら、自分の過去の経験から同じような事柄を引っ張り出し、重ね合わせて自分事にしています。つまり、自制できず思わず「共感しちゃう」人です。  

 

では、相手のために共感する、とはどういう事でしょうか。それは、共感する・しないをコントロール(自己制御)し、どの部分に共感するのか、どのように共感を示すのか等、意図をもって共感していきます。そうすることで、部下からの依存を避け、感情に引きずられることもなくなるのです。  

 

人間関係において、共感は欠かせないスキルです。しかし、だらだらと相手に引きずられてしまうのでは逆効果です。部下との信頼関係を構築するために「相手のため」の共感の示し方を習得することが、早期離職を防ぐひとつの対策となるでしょう。 

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パワハラ予防コラム vol.6~最強のポジティブ上司

先日出会った人達に「あなたはポジティブですか?それともネガティブですか?」と尋ねると、ほとんどの人が自分はネガティブだと回答しました。客観的にみてポジティブな人でも、自分ではネガティブだと思っている人が多いようです。
 
ネガティブを辞書で調べてみると
「否定的なさま。消極的」(goo辞書)
とあります。
常に「自分はダメ」「できない」「どうせ失敗する」と思い込み、新しい一歩に踏み出せない。というように一般的にネガティブはあまりいい印象は持たれていませんが、そもそもネガティブは人間が生きる上で必要不可欠に備わった本能です。
はるか太古の昔、一歩外を歩けば野生動物の餌食となり、また無防備に森へ入れば蛇や虫達の毒牙にかかり、初めて見る木の実を躊躇なく食して生死の境を彷徨ったりと、常に命の危機と隣り合わせでした。
「この先を進んだら死ぬかもしれない」そんなネガティブ思考が武器などの道具を作り出し、情報を共有することで最悪の事態を避けてきました。
つまり、ネガティブは命の危機回避能力なのです。
しかし、現代においてこの危機回避能力(ネガティブ)は必要なのでしょうか。
現代では野生動物に襲われる危険こそなくなりましたが「人とのつながりが切れる=情報が切れる」のはある意味、生命の危機を意味します。
そのため、スマホやタブレットなど情報通信機器が手放せなくなってしまいました。
 
逆に、ポジティブだった原始人は命の危険を顧みず、森の中をずんずん進み、誰も手を付けていない木の実を食し大半は命を落としてしまいました。
そうして残った一握りのポジティブ原始人が今に息づいているわけで、実はポジティブは命がけのハイリスクハイリターンなのです。
 
現代のポジティブな社会人というと、失敗しても心が折れずくじけない、頭の切り替えが早く常に元気。物事の明るい側面を見出そうとする柔軟な姿勢や言動があり、それが仕事における推進力となっている。
一見いいこと尽くめに思えるポジティブですが、実はポジティブな人が苦手だという声も多いのです。
 
プライベートで落ち込んでいる時、ポジティブな上司からネガティブな考え方を改めるように色々アドバイスをされて、最初は言われた通りネガティブにならないように気を付けたり、ネガティブな思いを書き出して、ポジティブに変換するなど試しましたが、「こんなこと思っちゃダメ」「あー、またマイナスなことを考えちゃった」など逆にそれがストレスになりました。
ネガティブである自分を否定し続けていくことで、段々とポジティブでいることに疲れてしまうのです。
 
仕事の上では、部下の意向を聞かずに「これくらいできるね?」と仕事を一任したり、複数の案件を担当させるポジティブ上司。経験豊富な自分にできることは、経験さえ積めば部下にも当然できると本気で思っているのです。
ある意味、背中を強く押してもらえる環境は部下が成長するにはもってこいなのですが、逆にこれがリスクとなる場合があります。
「いいから取り敢えずやってみて」「大丈夫、なんとかなるから」というポジティブな働きかけが部下へプレッシャーを与えてしまい、「できるだろう?」が、「それくらいできる能力もないのか?」に受け取られてしまう。
自分の能力を試されているように思えてどんどん動けなくなってしまい、これが度を超すとパワーハラスメントに進展していくこともあるのです。
会社にとって、行動力があってピンチに強いポジティブ上司はハイリターンな反面、目の前のピンチを自分に都合よく解釈して想定されるリスクに目を向けない。実はハイリスクな側面も有していることも忘れてはいけません。良い面と悪い面は常に背中合わせ。悪い面が表出しないためにはネガティブを考えないのではなく、ネガティブ要素に向き合い、しっかり対策する事で最強のポジティブ上司になれるのです。
 
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パワハラ予防コラム vol.5~自己肯定刊が高い上司と低い部下

諸外国に比べて、日本人の自己肯定感は低い。諸外国が軒並み70%以上自分に満足しているのに対して、日本では半数以下の45.8%の満足度です。

 

平成26年 内閣府調査「特集 今を生きる若者の意識~国際比較からみえてくるもの~」

 

そんな日本の若者たちは会社に入社してどうやって成長していくのでしょうか。今回は自己肯定感が低い部下と、その上司の関わりについて考えていきましょう。

 

そもそも、自己肯定感が低いというのは、どのような事なのでしょうか。

自己を肯定できないということは、自分を否定してしまうという事です。つまり、自分で自分を認められない状態のことを指します。大きく分けて、次の3つのパターンに分類すると

 

1.自信がなくて消極的

2.自己決定ができず依存的

3.他者と比較をして劣等感が強い

 

では、自己肯定感が低くなる要因とは一体何なのでしょうか。

 

1.自信がなくて消極的

成功体験が乏しい。勇気をだして発言したことを笑われる等、過去に嫌な経験をしたことにより、「目立つと笑われる。だから目立ってはいけない」と失敗体験が脳にインプットされて積極的な行動がとれなくなってしまう。

 

2.自己決定ができず依存的

習い事やお金の使い道、受験等、子どもの頃から自分で決定する機会が少なく、身近に強力な主導者から指示や命令を与えられ続け、段々と反発することを諦めてしまい受け入れるようになった。

 

3.他者と比較をして劣等感が強い

   小学校入学から大学卒業までなら計16年間、ずっと学校や先生のモノサシで評価され続け、点数を付けられる他者評価制のため、他人の目を気にする「他人軸」が育ってしまった。

 

以上の様に、持って生まれた資質というよりも、環境と他者の影響が大きいことが分かります。そして、これら3つはそれぞれが複雑に影響しあって自己肯定感を下げる要因です。

例えば、自己肯定感の低い部下の場合、言われたことはやるが「教えてもらえばやります」と受け身だったり指示待ちだったり、というのは自己決定できないことから起きています。

自信がなくて依存的なので何かトラブルが起きた時には「○○さんが言ったから」等と誰かのせいにしてしまう。

また、常に上司に評価されているような気持ちに陥り、劣等感から「どうせ自分なんて」と自分の意見が言えなくなってしまう。

ここまで聞くと知り合いの顔が頭に浮かんだ、という人もいるのではないでしょうか。

 

では逆に、自己肯定感が高いとは、具体的にどういう事なのでしょうか。皆さんの周りにいる自信に溢れた上司を思い浮かべてみてください。

失敗を恐れず、人の意見に振り回されず、自分のモノサシをもっていて、成功するイメージを持っている。上司として目標に向かって突き進んでいける強さと自信は部下へのロールモデル(模範)となるでしょう。

 

その自信はどこから来るのでしょう。

それは過去の経験に裏付けされて積みあがった自信であり、それが業務での原動力にもなっています。小さくても成功体験を重ねることで「自分のやり方・考え方は正しい」と、自分を認める(肯定する)ことができるようになります。

それが仕事の自信につながり、新しいチャレンジにも臆することなく未来を切り開いていける強さになります。

 

つまり、自己肯定感の低い部下を引き上げていくために上司にできることは、失敗しても大丈夫だと思える安心安全な環境作り、そして成功体験を得るために絶対にクリアできるレベルのハードルを用意したり、「君はどうしたいのか」という問いを投げ続けていく等の方法があります。

 

しかし、自己肯定感が高いことがリスク(短所)となって表出するケースも忘れてはなりません。経験から導かれる自信が揺るぎない分、自分のやり方が正解だと強く思い込んでしまう場合があります。

その為、自分のやり方や考え方を押し付けてしまう。自己肯定が高いというのは、長所である反面、裏を返せば横柄さや傲慢として表出する場合があり、「なんでそんなやり方をしてるんだ。お前がいくら考えたってどうせまた失敗するだろう?手間を掛けさせるな。俺の言うとおりにやれ」と、部下からするとパワハラに感じてしまいます。

 

 

こうした上司の自己肯定感の高さが短所として表出すると、部下の主体性を押しつぶしてしまい、自己肯定感の低い人財を創りあげてしまう可能性があるのでご注意ください。

 

 

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シェヘラザード 邑本なおみ

パワハラ予防コラム vol.4-タテがダメならヨコナナメ

メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は平成29年度では58.4%(H28年度は46.5%)で、少しずつ増えています。

 

平成29年 労働安全衛生調査(実態調査)厚生労働省

 

仕事が思ったようにうまくいかず、時間に追われ体力も精神力も疲弊してくると、部下が自分のメンタルを守るために「自分は不当な扱いを受けている」「これはパワハラだ」と会社や上司を悪者にして訴えてくることがあります。それはそれで厄介なのですが、もう一方で危険なのは部下の視野が狭くなってしまい、上司から差し伸べられた手が見えなくなってしまうことです。

 

学生時代から「今どきの若いモンは・・・」と周囲の大人達からずっと言われ続けてきた部下たちの中には、自分がちゃんとしなくては、と必要以上に真面目に受け止めてしまい「自分ひとりが足を引っ張っている。もっとやらないと皆に迷惑を掛けてしまう。」と常に自分を戒めてしまう場合があります。

 

上司としては、部下のモチベーションが段々下がっていくのが目に見えるので、心配して手を差し伸べてはみるのですが、それすら「甘えるのは社会人として失格だ。甘えてはいけない。」と払いのけてしまう。

上司が褒めても「そんなわけはない。自分はまだまだ未熟だ。あれも出来ていない。これも・・・」と素直に受け取れないし、上司が心配して「大丈夫か?」と声掛けしても「お前ちゃんと仕事できんのか?」に勝手に変換されてしまったり、部下の自主性を重んじるが故の「大変だったら辞めるという選択肢もあるけど、どうする?」という言葉も深読みしすぎて逆にプレッシャーを与えることになってしまう。場合によっては戦力外通知をされたのだと取られてしまい、それがきっかけでさらにメンタルダウンが進む要因となることも。

 

さて、一体上司としてはどうすればいいのでしょう?

 

こんな風に差し伸べた手が見えなくなってしまうのは、部下が精神的余裕がないことにプラスして、常識の壁を破れないことが一つの要因かもしれません。例えば、会社の飲み会で「今日は無礼講だ」と言われても、実際上司にため口をきくことは絶対にNG。これが常識だとすると、いくら気を許していいよと言われても、上司は友達ではなく、やはり上司なのです。

 

そんな時には上司と部下というタテの関係よりも、第三者との関わりが効果的な場合があります。例えば同僚とのヨコのつながりで「大変なのは自分だけでない」と知ったり、同僚のやり方、考え方を共有できると狭くなっていた思考の枠が広がり、それまで見えなかったものが見えてくるというのはよくある話です。

 

その他には、メンターの存在が有効です。社内メンターであれば、一般的には他部署の先輩社員がメンターとなって直接的な利害関係を飛び越え、いわゆるナナメの関係性で部下をサポートしながら導く存在となります。

タテの関係でうまくいかない時には、ヨコやナナメの関係を活用して部下の成長を育みましょう。上司であるあなたがなんとかしなくては!と他者に頼らず抱え込んでしまう様なら、あなたもまた視野が狭くなっているのかもしれないので、ご注意ください。

 

弊社は、パワーハラスメントするリスクをあぶり出す適性検査を導入した研修で北陸(石川・富山・福井・新潟)を中心に働きやすい組織づくりを支援しています。

 

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パワハラ予防コラム vol.3-承認下手は罪

元号が平成から令和に変わり、来年は待ちに待った東京オリンピックが開催されます。誰もが新しい時代の幕開けに期待をしているようですね。
4月に入社した新入社員達も、これから始まる社会人生活に不安と期待を抱いてきたと思います。受け入れる側も、新入社員がこれから困難な状況に陥っても強く乗り越え、将来会社を担う人材へと成長していって欲しいと願っています。
ゆとり世代やさとり世代と呼ばれる新人たちを、自分が教育しなおしてやろうといういわば親心で、それが上司としての役割でもある。ライオンが我が子を崖から突き落とすように、敢えて嫌われ役を買って出る等、成長の機会を与えるため時には部下を厳しく指導することもあると思います。
 
ですが、その「若いやつは甘えている=(だから)厳しく指導する」という事だけが独り歩きしてしまうと、行き過ぎた指導を正当化してしまい、パワーハラスメントとなってしまうことがあるのです。
 例えば、新人で仕事のやり方もわからないのに、いきなりクレーム対応を任せたり、早々に仕事を終えると次々に他の人の仕事をまわし、他の社員より高いレベルを求め、何度もやり直しをさせたり・・・。
この様に行き過ぎとなる一つの要因として、上司の承認力の弱さが挙げられます。人は生まれながらに「認められたい」という承認欲求を持っていて、承認には大きく分けると4段階あります。
仕事では結果承認をすることが多いと思います。
 
結果承認 結果・成果について承認する
行動承認 結果は出せなくとも、行動したことを承認する
意識承認 行動できなかったとしても、やろうと思ったことを承認する
存在承認 ありのまま、存在そのものを承認する
 
存在承認は赤ちゃんをイメージすると分かり易いかもしれませんね。年々歳を重ねるごとにこれらが「できて当たり前」になってしまい、結果しか見ない。
更に、結果を出していても承認下手な上司の場合、結果すら褒めることもせず、ただひたすら指示を出し続ける存在となってしまい、仕事が単なる労働になってしまうかもしれません。
そこに上司の役目として、厳しめのダメ出しを次々繰り出してしまうと「自分は何の役にも立たないお荷物だ」「この会社には自分の居場所はない」と感じさせてしまうのです。
歯の浮くようなお世辞を言う必要はありませんが、「最近よくやっているな(行動承認)」「色々考えてくれているようだね(意識承認)」という一言があるのとないのとでは、働く側の意欲はどう変わるでしょうか。
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パワハラ予防コラム vol.2-パワハラを言わない社員たち

労働者の相談の中で、「職場のいじめ」がこの6年間トップ、しかも毎年記録更新していいます。
「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」厚生労働省 2018年6月27日
~総合労働相談は10年連続100万件超、内容は「いじめ・嫌がらせ」が6年連続トップ~
パワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為のことを指しています。
この職場のいじめは、上司と部下の関係だけでは無く、パート同士、女性同士などの同僚間での人間関係の優位性(経験年数、年齢)で起きるものです。
ところが、「うちにはパワハラなんてありませんよ」という経営者・人事部の方が意外と多いのです。
なぜ会社側にはなかなか同僚間で起きるパワーハラスメントの事実が伝わらないのでしょうか。
それは、パワーハラスメントを受けた被害者は、会社に言っても助けにならないと諦めているからです。
「どうせ助けてもらえない」
「もうこんな会社に1日も居たくないから、引き止められたら困る」
「相談したことがバレて、もっと陰湿なパワハラが起きるから」
このような事態になってから聞くのは「職場に相談できる人がいない」という声です。
彼女、彼らがこう思ってしまっているのは、頼れる立場のはずの上司が
この訴えに対して、どのように扱っていいのかわからないこと。
特に女性の多い職場での管理職は、部下に対しての指導方法を学んでいないことが要因。
人は安心できない相手には本音を話せませんし、上司だからと言って必ず相談できる訳ではないのです。
うちは何かあればすぐに相談できるような体制を取っているんだけど、誰も相談に来ない。だからうちはパワハラなんてないんですよ」という場合は、本当にパワーハラスメントがおきていないのでしょうか?
信頼関係とは、1日でできるものではなく、日々積みあがってできるもの。
日ごろから社員やパートさん達と挨拶を交わし、日々の些細な変化に気づける関係を築くことが信頼関係の第一歩です。
 
信頼関係が築けると、「実は・・・」という本音が聴けて、会社が把握しにくいパワーハラスメントを軽減することにつながっていきますよ。
それは、離職防止や働きやすい環境づくりにも繋がって来ます。
弊社では、パワーハラスメントするリスクをあぶり出す適性検査を導入した研修で北陸(石川・富山・福井)を中心に働きやすい組織づくりを支援しています。
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パワハラ予防コラム vol.1-親父ギャグとパワハラ

男性の40代を超えると段々と出てくるダジャレ。いわゆる親父ギャグと言われるもので、部下を失笑させたり、家族からは無視されても凝りもせずダジャレを連発する姿がなんとも人間味が感じられて愛おしくも思えます。

 

この親父ギャグは、連想記憶の達人である中高年男性の脳の特徴だというのです。

 

歳を重ねる度に社会的経験が増え、側頭葉に様々な言語が蓄積され、そして新たにインプットされた言葉(例えば「電話」)と似ているものを側頭葉の1000億もの神経細胞から探し出し、瞬時に親父ギャグ「電話に誰もでんわ」が生まれるのです。意外と脳内では凄い働きを行ってできる親父ギャグですが、出てくるものは、長年自分の経験で積み上げられた言語集というわけですね。

 

だとすると、もし、長年「部下は仕事が遅い」「今の若いモンは…」という言葉が蓄積されていたとしたら、何かの拍子に「だからお前はダメなんだよ」という言葉が飛び出しかねません。これがいわゆるパワハラの一要因になっているのではないでしょうか。

 

パワハラが明るみになった時の言い訳として「指導の範囲内」というのをよく耳にします。これは加害者が長年蓄積してきた言葉を無意識に放出しているだけだから、本人に悪気はなく、自覚がないのです。

 

側頭葉で思い浮かんだ言葉は、本来は前頭葉で制御して「言わない」ことも選択できるのですが、前頭葉の老化で制御しきれなくなっているために、思いついたことを12歳の少年並みに言わずにはいられません。つまり、脳のブレーキが効かない状態でパワハラが起きているという事になります。

 

前頭葉が委縮し始める中高年の男性は、脳科学的に言ってもこの悪気のないパワハラと親父ギャグを次々に繰り出してしまう傾向にあるのでご注意ください。

 

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